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起きて!

 

叫ばれたことにも気が付かず、私は走っていた。

どこに向かうかもわからず、ただ足をひたすらにすすめている。

 

街灯に照らされた夜の風が、頬をすべって通り過ぎていく。

まだ6月にもならない5月の空気。

耳にイヤフォンをしているわけでもないのに、ずっと耳元で軽快な音が鳴っている。

 

人と一緒にいることが好きで友達が多くよくあそぶ人に憧れるけれど、周りのことを考えられない私は、結局はいつもひとりになってしまう。

多くの人といて、多くの人のことを考えて、私の存在も、まわりの人の存在も大切にできる人たちのことをいつも尊敬している。

私だって、夕飯やおやつを友達と食べたりしたいけど、お話はいつもなんとなく上辺になってしまって、その時はとっても楽しくてもあとに悲しくなってしまったり、一生懸命お話を考えなきゃいけないことがとてもストレスになってしまうから、結局は一人を選んでしまうのだ。

 

憧れる。

 

仕方ないのだと思う。でも、仲の良い友達がもっとほしい。

もう少し周りの子と話して、楽しんでみようかな。ちゃんと話を聞いて、私も話して。

 

・・・・できるかな。

 

友達、あとひとりかふたりか、ごはん食べる友達がほしいな。お話も、もちろん。

夜にカレー食べに行きたいな。

何か私がいいものを与えられることができる友達。

 

 

 

 

ざっざっざっざっ 

走る。足の裏、細かい砂のねじれる音、ざわりと揺れる髪の毛、くちびる。

あなたのことなんて全く考えずに、夢中になって走る。

会いたいなって昼間は思ってた。はやくこっちにこないかなって。

一緒にいたいって思ってた。ソファの上で映画を見るのもいいなって。

でも、今は、わたしだけ、わたしだけが走っていて、わたししか要らない、5月の夜の道路。

 

どうかはやく、私が、私一人で生きていける術を、場所を、見つけられますように。

 

2018/5/17

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